「しないといけない」と「したい」

自分の本心に気づくための問いかけ

 まず、「私は、……できないなあ」という文章枠を使って、折りに触れてあなたの心に浮かんでくる「できないこと」を探してみてください。たとえば、「私は、整理ができないなあ」とか、「私は、人とうまく付きあうことができないなあ」とか、「私は、最後までやり遂げることができないなあ」といったふうです。

  いくつか見つけ出すことができましたか。では次に、中身はそのままにして、文章の枠を「私は、……しないといけない」に置き換えてみてください。すると、「私は、きちんと整理しないといけない」、「私は、人とうまく付きあわないといけない」、「私は、最後までやり遂げないといけない」といったように、それがやれない自分をとがめるような文章ができあがります。

 こうした言葉を何回か自分に向かってつぶやいてみると、それは子どもの頃、親や先生から言い聞かされた言葉だったりすることに気づいたりしませんか。つまり、こうした自分をとがめるような言葉は、しばしば周囲の人の考えを鵜呑みにして、取り込んでしまったものだったりするのです。そうした忠告の多くは、一般的にいえば、役立つものでしょう。でも、あなたは本当にそうしたいと考えているのでしょうか。

 そこで次に、その中身を「私は、……したい」という文章枠に入れてみてください。すると今度は、「私は、きちんと整理したい」、「私は、人とうまく付き合いたい」、「私は、最後までやり遂げたい」という文章ができあがります。

 この文章を2,3度つぶやいてみると、内容によっては、「それは時と場合によるし、そもそも私にとってそれほど重要なことではない」といった思いが浮かんでくることがあります。「整理できているのは良いだろうけど、今のままでも困らない」とか、「人とうまく付き合うといっても、それは相手による」とか、「最後までやらないのは、自分には興味が持てないことだからだ。面白くもないことをやり続けて時間を無駄にするより、さっさと方向転換する方がいい」といった考えが浮かんできたりします。

 こういうふうに、「……しないといけない」のなかには、「……したい」へとすんなりつながるものと、つながらないものが混在しています。そして、この「……したい」とはつながらない行動規範こそが私たちを追い立てているものの正体であって、しばしばそれは、だれかの言葉を鵜呑みにしただけのものなのです。

 「……できないなあ」とか、「……しないといけない」とあなたの内側でつぶやく声を聞いたら、それを「……したい」に置き換えて、本当にそれがじぶんのしたいことなのかどうか、一度確かめてみてください。