不登校・親にできる支援

不登校のさなかにいると、本人も保護者もそこに希望を見つけだすことが難しく、無意味な衝突や変化のない毎日がただ繰り返されるだけで、まるで将来が閉ざされてしまったかのように思えることがあります。
 それでも、不登校は決して無意味な状態ではありません。ときには動きがないように見えることがあっても、不登校というあり方を通して、本人も保護者も多くのことを学びとり、将来の生活に向けての新たな活力を身につけていってるのだ、ということを見落とさないようにしたいものです。


1.初期段階での対応

 ここで言う初期段階とは、休み明けや特定の教科があるときなどに遅刻や欠席が目立つようになったり、頭痛・腹痛・発熱などの心気的な症状を訴えるなどして、欠席が2、3日続いたりするようになる時期を指します。

《対応の目標》
 本人が欠席の理由を言うようなら、その対応策を共に考えてやることは大切ですが、多くの場合、さまざまな要因がからみ合っているので、原因の追及に目を奪われすぎないようにしたいものです。まずは、今のストレスを軽減してあげることを目指しましょう。その上で、可能なら、無理のない登校方法について話し合い、学校内での居場所づくりに取り組みましょう。

《対応の基本方針》
 欠席の理由について本人の考えを聞き、それに沿った対応策を一緒に考えることで、無理のない登校の仕方を提案していくようにします。

《働きかけのポイント》
■ 学校に行きたくない理由をたずねる
 まずは、お子さんに欠席の理由をたずねてください。でも、学校に行きたくない理由をたずねても、これといった返答が返ってこなかったり、「放っておいてほしい」と言うだけだったりすることもよくあります。すぐには答えられなくても、少し時間をおいてお子さんが落ち着いているときに、「学校で何か困っているようなことはないか」とたずねると、答えてくれることがあります。いずれにしろ、お子さんの訴えに根気よく耳を傾けることが大切です。

 お子さんが不安や悩みをあげたなら、「そんなこと、気にすることはない」とか、「頑張りがたりない」と否定するのでなく、子どもの意見を尊重する方向で一緒に対応策を考えてみましょう。

 このとき大切なのは、欠席の理由を子どもがあげても、すぐに親が動こうとするのでなく、「親や教師にどのような手助けをしてほしいか」と子どもにたずね、自分で対処法を考えてもらう、ということです。こうした働きかけのねらいは子どもの心の成長を促すことにあります。ですから、子どもがあげる欠席の理由が本当かどうかということにこだわる必要はありません。

■ 交換条件を持ち出さない
 何かを買ってあげるから、何かをしてあげるから、明日は学校に行きなさいというように交換条件を持ち出して登校を促すことはしないでください。一、二度はうまく行っても、そういうやり方は必ず失敗します。そして、後に大きな不満の種を残すことになります。

 何とか子どもに動き出してほしいという思いから、しばしばこうした誘惑に駆られますが、交換条件を持ち出すという対応は、是非とも控えたいことです。

■ 連続して休まない
 子どもには、「しんどいときは休むのもいいだろうが、続けて休むと再び登校するのがたいへんになるので、2日以上連続して休まないようにしよう」という目標を提案してください。

■ 子どもから無理な要望が出てきたときの対応
 「どのような手助けをして欲しいか」とたずねると、それにそのまま添うことが教育上好ましいことか疑問に思えるような要望が出てくることがあります。たとえば、「いまのクラス(あるいは、特定の生徒)がいやなので、クラスを変わりたい」とか、「ある先生が嫌だから、変えてほしい」とか、「転校したい」といった、わがままとも思えるような要望が出てくることがあります。

 こうした現実的ではない要望が出てきたなら、「本当にそれができると思うか」と、お子さんにたずねてみてください。そうすると、「わからない」とか、「難しいだろう」という返事が返ってくることが結構あります。つまり、子どもはそれが無理な要望であることも知っているのです。無理とわかっている要望をぶつけることでお子さんが本当に言いたいのは、自分のしんどい気持ちを分かってほしい、ということなのです。
 要望に添える、添えないということよりも、まずは、「今は、学校に行くのがたいへんなんだね」と、そうしたしんどさに理解を示すことが大切です。そのうえで、どのような手助けを望むのか、再度子どもと話し合ってみてください。

  親子の間でこうした話し合いが持てると、たとえ適当な対応策が浮かばなくても、自分の気持ちを大切にしてもらえるということがわかるだけで、ちょっとしたストレスなら乗り越えていく力がついてきたりします。

 こうした初期段階での継続登校をねらった働きかけは、一面では、子どもの回避的な傾向や自己中心的な問題処理を容認することになります。しかし、いきなり本人の自覚を促すようなことを言い出すのは、本人を追い込むことになり、問題をこじらせてしまうことにもなりかねません。まずはこうした対応によって子どものストレスを軽減し、併せて、少しぎくしゃくしかけた親子関係の修復をはかることが大切です。本人の成長を促す働きかけは、子どもが登校し始めてからの課題となります。


2.欠席が続くようになった段階での対応

 これといった理由もなく欠席が続くようになると、ややもすると登校をせまる親と子どもとの間での衝突が激しくなってしまいます。そして、親の側は、子どもからの反発にとまどい、自らの対応に自信をなくしたり、不登校を学校のせいにして不信感をつのらせることになったりもします。

《対応の目標》
 この段階になると、多くの場合、短期間での学校復帰は難しいので、働きかけの目標を再登校から本人の心理的安定へと置き換えます。いたずらに登校を強要することは親子の衝突を増幅するので避け、本人が家庭内で安心しておれるようになることを当面の目標としましょう。

《対応の基本方針》
 学校に行く、行かないは二の次で、大切なことは本人が元気に、生き生きと生活できるようになることです。そしてそれには、家庭内で安定して過ごせるように援助することが大切です。明日は学校に行ってくれるか、来週からは行くだろうかということがとても気になるでしょうが、再登校は、あくまでもこうした働きかけの結果なのです。子どもの気持ちを無視し、いたずらに登校を迫るようなかかわりは、かえって問題をこじらせることになります。まずは、家庭内での子どもの居場所作りに取り組みましょう。

《働きかけのポイント》
■ 希望を持ち続ける
 たとえ不登校の期間が長びいたとしても、ほとんどの子どもたちは自分の生きる道を見つけ、社会に適応していくものです。おりに触れて、お子さんに、やがていまの状況を乗り越えることができるし、将来に希望を持てるのだということを伝えてあげてください。

■ 弱さを個性として受け入れる
 本人の弱さやわがままと思えるような性格特徴も、見方を変えれば、その子の持ち味でもあります。不登校児にしばしば見られるこだわりや過度の対人的気づかいなどは、いずれもその子の個性であり、不登校が克服された後は、むしろ長所となるものです。弱さを克服することをいたずらに子どもに迫るのでなく、今のままで子どもが持っている良いところを見逃さないようにしましょう。

■ 原因論にあまり立ち入らない
 不登校の原因を探し出すことにこだわりすぎると、しばしば責任のなすり合いになったりします。例えば、親の方は、「家ではこれほど元気なのに、学校の話になると落ち込んで、動けなくなってしまう。そうすると、原因は学校にあるのではないか」と考えるのに対し、担任の先生の方は、「うちのクラスの40人の生徒の中で、あの子だけが学校に来ない。そうすると、原因は家庭や本人の性格にあるのではないか」と考える、といった具合です。
 こうした責任のなすり合いは、夫婦間や祖父母との間でも起こったりします。

 当然ですが、こうした言い争いからは建設的な援助は生まれてきません。不登校の原因がわからなくても、適切な援助を行っていくことはできるのです。

■ 学校を休むときの連絡方法を、担任の先生と話し合っておく
 頻繁に学校を休むようになると、そのつど学校に連絡することが負担に感じられることもあります。学校を休むときの簡便な連絡方法をあらかじめ担任の先生と話し合っておくのがいいでしょう。

■ 家庭内での居場所づくり
 ここで言う「家庭内での居場所」とは、たとえば子どもに個室を与えるといったようなことではなく、子ども自身が、自分も家族の一員として相応の役割を果たしているという実感を持てるということです。子どもたちは、こうした「居場所感」に支えられて、自分を家族の大切な一員としてとらえ、家庭内で安定して生活できるようになるのです。

 具体的なかかわり方としては、家族のための手伝いを本人の「仕事」として、定期的にやらせるようにしてください。たとえば掃除を言いつけるにしても、自室でなく、玄関やリビングといった家族の共有空間の掃除をまかせるようにします。

 言いつける「仕事」は夫婦で相談し、本人が無理なくやれそうな簡単なものを選ぶようにしてください。毎日やらせるのでなく、週に1回とか2回というふうに、子どもと相談して決めるのも良いでしょう。そして、その「仕事」をやったときには、しっかりとほめてあげることが大切です。

 問題は、約束した「仕事」をぐずぐずして子どもがやろうとしないときの対応です。こうした「ぐずぐず」はかならず出てくるものですが、このときこそが子どもの心の成長を促す働きかけを行うチャンスなのです。「気が乗らないからといって逃げ出したのでは、いやな思いを引きずることになる。いやに思えてもやってみればあんがい簡単にできるし、そのあとは気持がすっきりする」と説明し、頑としてやらせるようにしてください。こうした経験が登校にまつわる「ぐずぐずした思い」の整理にもつながります。

■ 一日の過ごし方を子どもと相談する
 この時期には、学校を休んでいるという引け目から親と顔を合わせるのを避けようとしたり、これといってやることもないのでゲームに時間を費やしたりして、生活のリズムが乱れがちになります。そこで、基本的な生活リズムを子どもと話し合って決めることが大切になります。

 何時ごろに起きるのか、食事はどうするのか、何か日課としてやりたいようなことはあるのか、入浴や就寝は何時ごろにするか、といったことを相談して取り決めていきます。こうした話し合いでは、親の意見を押しつけることがないよう注意してください。子どもの考えを聞き取りながら、今のままで無理なくできる取り決めを見つけだしていくという姿勢でのぞむことが大切です。

 そうは言っても、すべて子どもの言いなりにするというのではありません。ポイントは、子どもの言い分を聞きつつも、こちらの要望も織り込んでいくということです。たとえば、起床の時間については子どもの考えに従うが、ただその際、起きたら歯を磨いて顔を洗い、着替えをするよう求める、といった具合です。

 朝食を家族と一緒に摂るように求めることは、概して、難しいものです。特に、登校している兄弟姉妹がいるような場合、朝食を共にすることは本人にとって過重な負担となりやすいので、慎重でありたいものです。また、勉強についても、子どもの自主性にまかせた方が良いでしょう。学習の遅れを取り戻すのは、安定して登校できるようになってからの課題です。

 いずれにしろ、こうした取り決めは学校を休んでいても子どもが家庭内で安心して過ごせるためのものですから、多くを求めないことが大切です。

■ 小遣いについて
 小遣いの与え方は、これまでと同じようにしてください。学校に行っていない、つまり、やるべきことをやっていないのだから小遣いは与えないという対応は、子どもに不要な引け目を感じさせることになります。小遣いがあることで、漫画を買いに行くとか、レンタルショップに出かけてみるなど、子供が外に出ていく機会を作ることもできます。友だちと遊ぶにしても、ちょっとした小遣いは必要です。



3.欠席が長期化した段階での対応

 不登校が長びくと、家族との接触を避けたいという思いもあって、しばしば、子供の生活リズムが昼夜逆転してしまうことがあります。しかし、学校の話を持ち出さなければ、以前のような家族との激しい衝突は影をひそめ、それなりに安定して家庭で過ごせるようにもなります。こうした時間が持てるようになると、やがて、それまでいやがっていた外出が容易になってきたり、自分から何かをやり始めたりするといったことがみられるようになるものです。

 親としては、こうした子どもの前向きな変化をうれしく思う一方で、その気まぐれな行動にいらだちを覚えたりもします。活動的になってきた子どもが、親の目には好き勝手な生活を送っているようにも映るので、そうした活動は好転の兆しであることを忘れないようにしてください。

《対応の目標》
 この段階になると、子どもの心のなかには、今の状況から抜け出そうとする前向きな動きと、そんなことは難しくてできそうもない、自分はもう駄目なのだという投げやりな気持ちが渦巻いています。ですから、焦らなくても必ず今の状況を変えていくことができるし、現に小さな変化は起こっているということを伝えながら、子どもの心のエネルギーを高めていくことを目標とします。

《対応の基本方針》
 今のままでも無理なくやれそうなことは何か、そのためにどのような援助がほしいか話し合い、目の前の小さな行動目標を協力して見つけ出していくようにします。いたずらに登校を迫るようなことは、望ましい対応ではありませんが、かといって腫れ物に触るように学校の話を避けるのも、好ましいことではありません。積極的に支援をしたいという姿勢は示しながらも、決して本人を追いつめないことが、つまり逃げ場をのこしつつ、かかわり続けることが大切です。

 また、ややもすると子どもへのかかわりが乏しくなりやすいので、先に書いたように簡単な手伝いを頼むなどしてほめてやる機会を増やすよう心掛けてください。子どもがいらだっているようなときには、安心して動き出せるようになる日がかならず来ると伝え、支えてあげてください。

《働きかけのポイント》
■ 小さな変化を見逃さない
 些細なことであっても、子どもを見ていてホッとしたことや、うれしかったことを見逃さないようにしましょう。ちょっと笑顔が見られたとか、いつもより会話がちょっとつながったといったことでいいのです。ややもすれば見逃してしまうこうした小さな変化を拾い上げていくことで、子ども自身も自分の変化を実感できるのです。

■ 子どもの反応を見ながら柔軟に働きかければよい
 どの子にも適した万能の対応というのはありません。結局、子どもを見ながら思いつく働きかけをあれこれ試し、手探りでやっていくしかありません。手探りだから、当然、うまくいかないこともあります。だからといって、それが無駄だったというのではありません。その時は思うような反応が返ってこなくても、案外、子どもの方はあれこれ考えていたりするものです。そして、後で子どもの方からその話を持ち出してくるといったことが結構あります。

 とにかく、適切かどうかにはあまりこだわらず、子どもの反応を見ながらあれこれやってみることです。要は、子どもの反応に応じて、こちらも対応を変えていく柔軟性があればいいのです。

■ 親にできる手助けの範囲をしっかりと伝える
 比較的安定して家庭内で過ごせるようになると、子供の方も、興味の持てる活動に自発的に取り組むようになるものです。ただ、そうした活動は気まぐれなものであり、活動的になってきた子どもが親の目には好き勝手な生活を送っているように映りやすいので、そうした活動は好転の兆しであることを心にとめておいてください。

 こうした時期には子どもからあれこれの要求(例えば、漫画の本を買ってきてほしいとか、どこかに連れて行ってほしいとか)が出てくるようになりますが、親が手助けできる範囲をおだやかに、でもしっかりと伝えるようにしたいものです。

■ 長期欠席に対する学校の扱いや進路についての情報を伝える
 小中学校では、欠席が長期になっても進級を認めることが一般的ですが、一応、学校の先生に確認したうえで、進級できることを適当な時期に本人に伝えておく方がいいでしょう。併せて、試験を休んだときの扱い(たとえば通知票の評価の仕方など)についても、そのまま伝えてください。中学3年生の場合は、進路についての情報を伝えることも大切です。このままでは高校に行けないと脅すのでなく、不登校のお子さんを受け入れてくれる高等学校もけっこうあるので、お子さんと一緒にインターネットで調べてみたり、先生にたずねてみたりしてください。

 高等学校では、欠席による原級留置や、休学、退学ということが問題になってきます。あとどれくらい休んだら単位を取れなくなるのか、その時はどういう扱いになるのか、こまめに伝えていくことが必要でしょう。本人が退学したいと言いだすようなときは、いきなり退学するのでなく、年度末まで休学する方向で子どもと話し合ってみてください。休学中であっても担任や教育相談担当の先生はいろいろ相談に乗ってくれますし、また、最終的に転校や退学ということになっても、高等学校の先生はその後の進路についての情報をいろいろ持っているので、何かと相談に乗ってくれる、ということをお子さんに伝えてください。
 こうした学校の対応や進路について正確な情報を伝えておくことで、子どもは、将来に対する合理的な展望を持つことができるようになります。


4.再登校に向けての働きかけ

 朝、決まった時間に自分で起きようとする、ゲームに費やす時間を自分で決めようとする、何か運動をするようになるといった自発的な活動が増えてきたり、学校の先生からの電話に出たり、家庭訪問をしてくれたときに、顔を合わすことはなくても後でその様子を知りたがるなど、学校との接触に対する抵抗感が薄れてくると、再登校に向けての働きかけを始めても良い時期にきています。

《働きかけのポイント》
■ 先生に依頼して、家庭学習用の教材(プリント等)を渡してもうようにする
 このことについては、担任の先生に以下のようなことをお願いしてください。
 最初は、簡単な内容のものを少量(次の家庭訪問時までに余裕を持って仕上げられる程度の分量)だけ渡していただきたい。少なすぎるかと思える程度の量でかまわない。受け取ったプリントは、次回訪問時にほめ言葉や訪問予定日などのメッセージを書き添えて返すようにしてもらえないか。多くのことを書いていただく必要はないが、学習プリントを本人との間の連絡帳として使うようにしてもらえないだろうか。
 おいおい、本人の反応を見ながらプリントの量を増やしていもらうことになるが、そのとき、量や難易度を一気に上げないよう注意していただきたい。学習プリントの目的は、学習の遅れを取り戻すことにあるのでなく、本人と担任とのつながりを保つことだと考えている。

■ 再登校を目標とすることを本人と話し合う
 先生との間で学習プリントのやりとりがほぼ安定してできるようになったら、機会を見て、再登校をこれからの目標としないかと誘いかけてください。たとえば、「いま抱えている問題(気分や感情の不安定さ、自信の喪失、人目が気になるなど)は、長期欠席や引きこもりのために一時的に生じているもので、あなたの本来の姿ではない。今はとても難しく思えるだろうが、いったん学校に行き始めたら、思うより短期間でとけ込むことができるし、気分や考え方もずいぶんと変わるものだ。無理のないペースで、学校に戻ることを目指さないか」といった提案をします。

■ 再登校に向けて、生活リズムを整える
 再登校を目標とすることが合意できたなら、起床や就寝時間を中心に、一日の過ごし方の枠を決めていくようにしてください。制服への着替え、学習、散歩、家事の手伝い、ゲームやパソコンに費やす時間、家族と一緒の食事、夕食後の時間の過ごし方などを取りあげ、生活リズムを徐々に整えていくようにします。学校での授業時間と合わせて家庭で短時間自習をするよう提案するのも良いでしょう。

 こうした約束をする際、いきなりその約束を毎日守ることを求めるのでなく、たとえば、「月曜と水曜は一緒に決めた生活リズムを頑張って守るようにしてほしいが、それ以外の日は好きにしてよい」というように、約束を守る日を限定した方が子どもに受け入れられやすいものです。

■ 登校に向けて、本人も合意できる目標を立てる
 上記のような働きかけと並行して、「どのような形での登校ならできそうか、登校時はどのように過ごすのがよいか、考えておいてほしい。学校側にはそれに合わせてくれるよう依頼する」というように、登校の方法を話し合ってください。こうした相談を持ち出すと、これまでの遅れを挽回しようとして過大な目標をあげる子どもも多いので、そうした意欲を尊重しながらも、「最低これくらいやれたら自分でもまあ満足できる目標」を話し合っておくのがいいでしょう。


5.散発的に登校し始めてからの対応

 再び登校し始めるとき、休み明けの朝からいきなり教室に入るような子もいれば、他の生徒が登校し終えてから別室(保健室や空き教室)にやってくるのを望むような子もいます。教室に入るにしても、他の生徒より先に入って待つのがいいと言う子もいれば、担任と一緒に入るのを選ぶ子もいます。とにかく再登校の形態はいろいろです。できるだけ子どもの要望に合わせるようにしたいものです。

 また、登校の形態はどうであれ、この時期の登校は一進一退であるのが普通ですから、あらかじめ子どもにもそれを伝えておくのがいいでしょう。たとえば、「一旦学校に行くようになっても、またしんどくて休んでしまうようなことがあるかもしれない。むしろ、それくらいが普通だ。大切なのは、自分のペースで登校するということだ」といったことを伝えておくことで、また休んでしまうことへの不安を軽減することができます。

《働きかけのポイント》
■ 登校ができても、欲張らない
 久しぶりに学校に行くと、周囲への気遣いから、思う以上に子どもは疲れるものです。ですから、この機会を生かそうとして欲張らないことが大切です。別室登校であったり、短時間だけの登校であるようなとき、いきなり長時間学校にいさせようとしないでください。「せっかく登校したのだから、給食を食べていかないか」、「少し教室に入ってみないか」、「友だちと話をしてみないか」などと促したりすることは、無理をさせてしまうことになりやすいものです。「今日は頑張ったね。これで目標達成だ」と、子どもがやり遂げたことを強調して伝え返すようにしてください。

 教室に入ったようなときには、同級生の反応を担任の先生にたずね、それを簡単に伝えてあげるといったこともいいでしょう。

■ ゆっくりと遅れを取り戻す
 再び登校し始めると、授業に付いていけないことを苦にすることがよくあります。勉強に関しては、「まずは、いま学んでいることについて行けるようになればいい。学校での勉強はくり返し学んでいくようなところがある。先になってよくわからないところが出てきたら、そのつど補っていけばいい。遅れはゆっくりと取り戻していこう」といったことを伝えてあげてください。
 また、これは少し先のことになるでしょうが、不登校という経験が本人にとって、そして同時に親にとってとってもどのようなものであったのか、そこから何を得たのかということを、機会を見つけてゆっくり話し合ってみるのもいいでしょう。