うまく眠れないときのために

よりよい眠りのためのヒント

 健康な生活を送るためには、心身の休養は欠かせません。その基本となるのが睡眠です。睡眠不足が続くと、日中の眠気、注意力の低下、だるさなど、さまざまな不調が現れます。

 睡眠は、単に身体を休めるためのものではありません。睡眠中の身体は、記憶の強化、ホルモン分泌、新陳代謝、細胞の修復など、明日への活力を培うために、さまざまなことを行っています。睡眠不足に陥ると、これらの働きが不十分となるため、生活習慣病をはじめとする、さまざまな病気につながることも明らかにされています。

 ところが、生活様式の変化やさまざまな精神的ストレスから不眠となり、睡眠不足になる人も少なくありません。ある調査によると、成人の約20%が何らかの不眠を訴えており、3~5%が睡眠薬を使用していることが報告されています。


不眠のタイプ

入眠障害
布団に入っても、なかなか寝つけない。また眠れないかもと思うと、よけい眠れなくなる。
中途覚醒
眠りが浅く、夜中に何度も目が覚める。トイレに起きた後、再び寝つきにくい。
早朝覚醒
寝不足なのに、早朝いやな気分で目が覚めてしまう。一度目が覚めると、その後眠れない。
熟眠障害
睡眠時間は足りているのに、すっきりしない。あまり眠れてない感じがして、頭が重い。

  なお、睡眠中のイビキがひどい、一時的に呼吸が止まる、手や脚がぴくつく、膝から下がむずむずするといったことがみられる場合は、背後に病気が隠れていることもありますので、専門医に相談してみてください。

睡眠には個人差がある

 まず覚えておいていただきたいのは、睡眠にはずいぶん個人差があり、適切な睡眠時間は人によって違っている、ということです。睡眠は長さより質です。日中、特に眠気で困るようなことがなければ、十分睡眠がとれていると考えましょう。

毎日おなじ時刻に起床し、日光を浴びよう

 私たちの体内時計は25時間周期で動いています。そこで、1日24時間のサイクルにあわせるために、リセットする必要があります。その役割をするのが、朝の光です。目覚めたらカーテンを開け、日光を浴びるようにしましょう。
 また、就寝時刻が遅くなっても、翌日遅くまで寝ていないで、いつもとおなじ時刻に起床するようにしましょう。多少眠くても起きてしまえば、その晩の早寝につながり、体内時計のリズムを大きく乱すことなく調整できます。
 休日の朝寝坊も、長くても1,2時間にとどめておくようにしましょう。

上手な仮眠のコツ

 夜の睡眠時間が足りないときは、上手に仮眠することで補うことができます。家族を送り出した後に二度寝ができるようなら、朝のうちに1時間以内の仮眠をするといいでしょう。その際のポイントは、最初に起きたときに、しっかり日光を浴びて、体内時計を活性モードにしておくことです。こうしておくと、体内時計に大きく影響することなく、二度寝ができます。
 午後の仮眠は、遅くても午後3時までにとるようにしましょう。それ以降になると夜の睡眠の妨げになったりします。また、仮眠の時間は、短時間(20分~30分)にとどめてください。コーヒーを飲んでから昼寝すると、20~30分後にカフェインの作用が出るので、起きたときシャキッとできます。

快眠のための軽い運動と入浴法

 運動習慣のある人は寝つきがよく、深い睡眠を得やすいことがわかっています。快眠のための運動は、夕方から夜がおすすめです。夜の休息モードにはいると、体温は徐々に下がりはじめ、よい眠りにつけます。そのため、就寝の3時間くらい前に運動をして、一時的に体温を上げておくと、入眠のための体温の下げ幅を確保できます。
 特別な運動でなくても、ウオーキングのような有酸素運動であればかまいません。リラックスが目的なら、ストレッチ、ヨガ、手のひらを握って開くなど、ゆったりと呼吸しながら行う体操もよいでしょう。呼吸を止めてダッシュするような激しい運動は、逆効果です。 快眠のための入浴の目的は、運動と同様、一時的に体温を上げて、眠りにつくまでの体温の下げ幅をつくることです。就寝直前ではなかなか体温が下がらず、逆効果になることがあるので、布団に入る1時間くらい前にしてください。ぬるめの湯にゆっくりつかる半身浴がおすすめです。

眠くなってから布団に入る

 寝つきの悪い人のなかには、今夜こそしっかり眠ろうと意気込んでしまい、かえって眠れなくしているような人がいます。また、眠くないのに「とりあえず布団に入ってみよう」とするのも、眠れない時間をよけいに増やすことになります。
 就寝時刻にはあまりこだわらないで、眠くなってから床につくようにしてください。そしてそれが何時になろうとも、翌日いつもの時刻に起床することが、「眠る力」を取り戻す第一歩となります。

入眠儀式をつくる

 たとえば、寝る前に決まった音楽を聴く、アロマをたく、まくらを3回たたく、ペットにおやすみを言うなど、眠る前に決まったことを行うことで条件反射的に眠る態勢が整うようにします。これを入眠儀式といいます。「気持ちよく眠れる」と唱えるのでもかまいません。自分なりの入眠儀式をつくってみましょう。

身体を休息させればいい

 床に入っても寝付けないようなときは、就寝時刻にはあまりこだわらないで、眠くなってから床につくようにしてください。むりに眠ろうとするのでなく、「身体を休息させればいいのだ。そうすれば、明日はいつもの時間に起きても大丈夫だ」と考えて、身体がリラックスした感じに注意を向けるようにしてください。

気になることを書き出してみる

 布団には入ったものの、気になることや不安な思いが浮かんできて、どうしても眠れそうにないときは、1度起き出して、気になることを簡単に書き出してみてください。次回のカウンセリングのときに、そのことについて話し合うことができます。
 また、布団に入ったら、どんなささいなことでもいいので、「今日のよかったこと」を思い浮かべてみるものいいでしょう。

規則正しい食事

 規則正しい食事は、体内時計のリズムの調整に役立ちます。特に朝食は大切です。目覚めた後まず、就寝中の発汗によって失われた身体の水分を補うために、1杯の常温水を飲みましょう。そして、ご飯やパンなどの炭水化物を食べることで、能のエネルギー源となる糖質を補給しましょう。また、卵や乳製品からタンパク質を、果物からビタミン類をとることで、体温を上げることができます。
 食事をすると代謝が上がるため、体温が下がりにくくなります。夕食は就寝3時間前までにすませると、質のよい睡眠につながります。食後のコーヒーはひかえましょう。風邪薬や栄養ドリンク剤にもカフェインが含まれていますので、気をつけてください。

寝る直前の飲酒、喫煙はひかえましょう

 お酒は寝つきをよくしますが、深い睡眠を妨げて、夜中に酔いが覚めて目覚めてしまったりするので、安定した睡眠の妨げになります。また、タバコのニコチンには覚せい作用があります。「眠れないから一服」は逆効果です。

睡眠薬は専門医の指示どおりに服用する

 どうしてもうまく眠れないときは、睡眠の専門医や精神科、心療内科を受診し、睡眠薬を出してもらうこともできます。現在使われている睡眠薬は、安全で効き目が穏やかです。医師の指示どおりに服用していれば、癖になったり、困った副作用が出てきたりすることはありません。
 市販の睡眠改善薬には、風邪薬や花粉症薬に使われている抗ヒスタミン薬が配合されています。処方の睡眠薬とくらべると、起きたときに少しだるさを感じるという人もいるようです。
 いずれにしろ薬の効果には個人差があり、効かないからといって服用量を勝手に増やすのは危険です。また、睡眠薬とアルコールとの併用はぜったいに避けてください。